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青丘文庫研究会月報<218号> 2007年11月1日

発行:青丘文庫研究会 〒657-0064 神戸市灘区山田町3-1-1

()神戸学生青年センター内  TEL 078-851-2760 FAX 078-821-5878

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 @在日朝鮮人運動史研究会関西部会(代表・飛田雄一)

 A朝鮮近現代史研究会(代表・水野直樹)

郵便振替<00970−0−68837 青丘文庫月報>年間購読料3000

     他に、青丘文庫に寄付する図書の購入費として2000円/年をお願いします。

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●青丘文庫研究会のご案内●

 ■第254回朝鮮近現代史研究会

  11月11日(日)午後1時〜3時

  「福沢諭吉の朝鮮観」 金慶海

 ■第297回在日朝鮮人運動史研究会関西部会

  11月11日(日)午後3時〜5時 

  「比叡山ケーブルカー・ロープウェイ工事と朝鮮人労働者

    ―詩人鄭芝溶のエッセイを手がかりに―」 水野直樹

 ※会場 神戸市立中央図書館内 青丘文庫  TEL 078-371-3351

 

第244回朝鮮近現代史研究会(2006年11月12日)

 日本統治時代にブラジルへ移住した朝鮮人

  〜韓国系コロニアの礎となったクリスチャン「三田昇浩−張昇浩」〜  全淑美

                (※編集部のミスで報告掲載が遅くなりました。)

* はじめに

 ブラジル在住の韓国系コロニアの人口は2005年現在、約5万人(ブラジル国籍を含むが、正確な数字は把握されていない=韓人会)と言われているが、張昇浩はその基礎固めに大きく貢献した人物のひとりで、韓国政府からも高く評価されている。彼については、高橋幸春氏(「祖国は遠きにありて」『月刊ジャーナリスト』1982年、情報センター出版)によって報告されているが、その後も研究対象にされることはなかった。また、今回の調査によって、自由メソジスト教におけるブラジル日系布教第一陣を支えるという重要な役割を果たした人物でもあることがわかった。

 研究会においては、生前のインタビュー記事や資料、ブラジルでの聞き取り調査より、ブラジル渡航の経緯、日系コロニアでの生活及び初期韓国系コロニアの形成との関わりを通して、日本統治時代に移住した彼の足跡の概略を報告した。

* 朝鮮半島から日本、そしてブラジルへ

 1907年3月23日生まれ。忠清北道出身。少年時代、信仰に出会い、家族の強い反対に遭い、家を出る。16歳の頃大阪に渡る。1928年、西住正義(19001946)のブラジル日系コロニアへの布教活動にともない、張昇浩もブラジル移住を決断する。西住氏を経済的に援助しようと思ったのが動機という。

 青年時代は農場で働き、西住牧師への経済的援助を忠実に実行。1938年、三田百合(1920年埼玉県生まれ。1935年渡伯)と結婚。見合いの初対面で「私は朝鮮人で、クリスチャンです」(遺族の談話)ときっぱりと言うほど、彼を語るとき、この「朝鮮人」と「クリスチャン」という要素は欠かせない。三田家には息子がいなかったことから、三田家の養子になることを決意し、結婚後は三田姓を名乗る。その為、韓国系コロニアでは「三田ハラボジ」と呼ばれている。

* 戦後、同胞との出会いと救済活動

 1956年2月6日、朝鮮戦争中捕虜となり、休戦後本国帰還を拒否し、中立国行きを希望した同胞54名がやってきた。張昇浩は彼らとの出会いを「私の人生で最高の喜び」(『韓国日報』日付不明、新聞社照会済み)と表現している。

 その後の出会いは、1962年以降の朴正熙大統領時代である。朝鮮半島からの移住者が増加して来るに従い、彼の生活も同胞中心に繰り広げられる。

 戦中戦後、彼は一人で妻、9人の子供、義父を支え、貧困にあえいでいた。しかしながら、韓国人への救済活動は止むことはなかった。

 (一)韓国移民の出迎え(二)住まいの保証人(三)無償で米を配達。

 とりわけ、保証人の話は圧巻で、数百名に上る数を上げる人が多く、相当数の韓国人が世話になったことは事実である。また、貧困に苦しむ同胞のため、その利益を顧みず、米を配達し続けた。このような韓国移民に対する献身的な功績が認められ、1972年、大統領朴正熙から光復節の招待を受け、渡伯後初めて韓国を訪問、表彰されることになったのである。

 また、張昇浩は韓国籍を得ることもなく、ブラジル国籍も得られないままであったが、それでも、多くの韓国系コロニアの人々が賞賛して止まない。現在、在伯韓人会名誉会員として名を連ねている。

* おわりに

 2000年5月10日、張昇浩氏は93年の生涯を閉じる。メソジスト教団の墓地に埋葬され、西住牧師と共に眠っている。

 研究会当日、張昇浩のメソジスト教団の中での位置を明確にするということなどさまざまなご指導をいただき、現在継続調査中である。先頃、張昇浩縁の教会に行き、そこでも貴重な資料を拝見させて頂いた。また後日改めて報告することになるであろう。

 

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『在日朝鮮人史研究』37号(2007年10月)

(在日朝鮮人運動史研究会編、緑陰書房、2520円)

   供託をめぐる国家責任と企業責任          古庄 正

   一九二〇年代大阪における「内鮮融和」時代の開始と

   内容の再検討−朝鮮人「救済」と内鮮協和会・方面委員−

                           塚崎 昌之

   関東大震災朝鮮人虐殺と日本の在日朝鮮人政策

    −日本政府と朝鮮総督府の「震災処理」過程を中心に−

                  盧ジュウン/村上尚子訳

   戦前期京都上賀茂地区における朝鮮人労働者

    −すぐき・屎尿・砂利−            高野 昭雄

   聞き書き−陸軍少年飛行兵から特攻隊貢になった朝鮮人−

                       ペヨンミ・野木香里

   一九五〇年代民団の「本因志向路線」        盧 埼霙

   李恢成とアイデンティティ−民族意識から自己発見へ−梁 明心

 

   特価2000円で販売します。希望者は、2000円+送料(160円)

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   郵便振替<00970−0−68837 青丘文庫月報>

 

●竹内康人編著----------------------------------------------------------

「戦時朝鮮人戦時強制労働調査資料集−連行先一覧・全国地図・死亡者名簿−」

(神戸学生青年センター出版部、20078月、B5、234頁、1575円)

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<目 次> はじめに/1、戦時朝鮮人強制労働調査の現状と課題/2、強制連行期朝鮮人強制労働現場一覧/3、強制連行全国地図/4、強制連行期朝鮮人死亡者名簿/ おわりに

【購入方法】:代金1575円(送料センター負担)を下記郵便振替でご送金ください。

       <郵便振替:01160-6-1083 (財)神戸学生青年センター>

 

【今後の研究会の予定】

 12月8日(日)、在日(塚崎正之)、近現代史(未定)、1月12日(日)在日(未定)、近現代史(水谷清佳)、2月17日(日、※兵庫在日外国人教育研究協議会の集会と重なるため17日開催とします。ご注意ください。)在日(浅見洋子)、近気現代史(未定)。研究会は基本的に毎月第2日曜日午後1〜5時に開きます。報告希望者は、飛田または水野までご連絡ください。 

【月報の巻頭エッセーの予定】

 12月号以降は、佐藤典子、佐野通夫、田部美智雄、張允植。よろしくお願いします。締め切りは前月の10日です。

 

■その他の催し■

 ◆「ウリナラ」講演と上映の集い

 20071118日(日)/第一回上映15:00 ●第二回上映18:00 

 講演16:30 「ドキュメンタリーと私」 監督 河真鮮(ハ・チンソン)さん

 参加費1000円(シニア65歳以上、学生500円)/会場 ()神戸学生青年センター

 ◆映画「在日朝鮮人『慰安婦』宋神道のたたかい−オレの心は負けていない−」上映

     講演「学生たちと学ぶ『慰安婦』問題」

 2007121日(土)午後130分〜映画上映(95分)

 ○2007121日(土)午後330分〜5時 講演

 講師:石川康宏さん(神戸女学院大学教授)

 会場:神戸学生青年センターホール/参加費:1000円(学生500円)

 

【編集後記】

           急に秋らしくなってきました。今年の秋は短いのでしょうか。

           堀内稔さんが『ひょうご部落解放』2007年秋号に「このごろ思うこと−青丘文庫の思い出」を書かれています。懐かしい話もでてきます。ごらんください。

           『在日朝鮮人史』の今号に関西部会から塚崎さん、高野さん、梁明心さんが論文をかかれています。在日研究会の会員(年会費5000円)には、3冊お渡しします。会員に以外の方には雑誌の「持続可能な」発行のためにご購入を是非お願いします。申し込み方法は3頁をごらんください。

              飛田雄一 hida@ksyc.jp

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