青丘文庫月報/133号/98年11月5日

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青丘文庫研究会のご案内

第175回朝鮮民族運動史研究会
11月8日(日)午後3時
報告者 水野直樹
テーマ 「朝鮮関係コミンテルン資料について」

第210回在日朝鮮人運動史研究会
11月8日(日)午後1時
報告者 金基旺
テーマ 「在日朝鮮人留学生の民族解放運動に関する研究―1920年代を中心に―」

※会場はいずれも青丘文庫(神戸市立中央図書館内)

 

 

エッセー/民受連、雑感

廣岡浄進

大学で、民族学校出身者の受験資格を求める阪大連絡協議会(阪大民受連と略称している)の運動にかかわっている。べつに、水野さんにオルグされたというわけではない。一部の人からはきっと、勉強しない院生だと思われているだろう。

 ぼやいても始まらないことくらいは分かっているのだが、改めて阪大でこのような運動に広がりを持たせることの困難さを痛感している。大学当局の対応が無茶苦茶なのは、予測がついていた。先日などは、入試制度委員会委員長である副学長が、学生との話し合いに応じようとしなかったばかりか、学生部はその申し入れに行った学生を特定し、教えてもいない自宅の電話に連絡してきたのである。個別マイノリティの人権擁護以前の、鈍感な人権感覚といわざるをえない。

  学生が集まらないこと、運動の主体がごく一部の学生にとどまっていることが、より深刻である。報道にもそれなりに取り上げられているのに、だ。わたしたちの力不足もあるのは十二分に承知だが、それにしても関心が薄いのか、そうでなければ随分よくないイメージを持たれているのだろう。朝鮮語の授業でアピールしても、反応はないに等しい。静かに聞いているだけマシと思うべきなのだろうか。

 いうまでもなく重大な人権侵害を被っている当事者が存在する現実は抜きにできないが、それを「被差別者−差別者」の構図に閉じ込めない、そこの溝をこえていこうとする具体的な関係を築く作業をできないかと、個人的には考えているのだが、どう言えば伝わるのだろうか。だが、口では伝わらないとしても、言い続けるしかないように思う。

 蛇足だが、大学祭では11月1日に、平野裕二さんと洪祥進さんの対談企画「痛みと対話〜『国際化』・共生・民族教育、そして大阪大学〜」を開催する。この月報が送られる頃にはもう大学祭は終わっているはずだが、ご一報くだされば資料集をお分けしたい。

HIROOKA Kiyonobu <hrok6408@let.osaka-u.ac.jp>

 

 

第173回朝鮮民族運動史研究会(9月13日)

「京都時代の尹東柱 ―― 南炳憲さんに聞く ――」

林 茂

 一昨年、1996年11月16日に京都の同志社大学で、戦時中に同志社に在学していたが、兵役等により中途退学ないしは除籍処分を余儀なくされた朝鮮及び台湾出身の元学生に、特別学位を贈呈する式典が行われた。9名の出席があった。1942年10月に同志社に入学し、43年7月治安維持法違反容疑で逮捕され、45年2月16日に福岡刑務所内で獄死した詩人尹東柱が同志社に学んでいた同時期の学生たちである。出席者の一人、アメリカ、ロサンゼルス南郊に暮らす南炳憲さんが、当時尹東柱と親しく接した経験のある方であることが判明した。

 南さんのお兄さんが尹東柱と中学時代まで同級の幼ななじみで、異郷の地で学生生活を始めた南さんの下宿を尹東柱の方から訪ねてくれたとのことである。先輩として色々話をしてくれた。英語の勉強をするならW・H・ハドソンの『緑の館』を原書で読みなさいと言われた。また、尹東柱が‘京都に来てほんとうによかった’と語る口調をはっきりと覚えていると言う。特に印象深かったのは、尹東柱が南さんの下宿で何回となく、紙片に書かれたタゴールの英語の詩を朗読してくれたことであったと言う。かの「かつてアジアの黄金時期に 朝鮮はその燈火をかかげる一人であった その燈火はふたたび灯されるのを待っている 東方を照らすために  In the golden age of Asia Korea was one of itslamp-bearers,and that lamp is waiting to be lighted once again for the illumina-tion in the East」という詩であった。立教時代に「六畳部屋は他人の国」と書いたのが現在に残る尹東柱の最後の詩である。それから半年後に京都に来て後輩の下宿でタゴールを朗読する尹東柱は、いとこの宋夢奎との再会ばかりでなく同胞との交わりも拡がり、一段と充実した詩作、読書の生活を送っていたことが窺える。内省的、もの静かな方であったと南さんは尹東柱の印象を語っていたが、自らの行く末もいよいよ案じられる日帝末期の暗い日々に、民族への思いをタゴールに寄せて後輩に伝えていたのであった。南さん自身は尹東柱が逮捕された後、光復軍に身を投ずべく重慶に向かったが、麗水の沖合で捕えられた。タゴールとアジアのナショナリズムを論じる際に、これまで中国と日本との関係のみで語られてきた。「亡国の詩人」と日本人から冷たく遇されたタゴールを、植民地朝鮮の視点からもう一度捉えなおす必要がある。

 

第208回在日朝鮮人運動史研究会(9月13日)

「阪神地域の朝鮮人の定住をめぐって」 高木 伸夫 (略)

 

 

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兵庫朝鮮人労働運動史−八・一五解放前

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編集後記

★  変な秋だとおもっていたら、急に「冬一番」という今日このごろです。いかがお過ごしでしょうか。余裕をもって発行しようと思っている『月報』ですが、また、研究会の直前になってしまいました。

★  本号には神戸市立中央図書館よりご提供いただいた雑誌目録を再録しました。利用者にとってはとても便利なものです。ご利用下さい。

★  10月の研究会で、青丘文庫の雑誌で欠号となっている韓国の雑誌等を会員で分担して購読し、それを寄贈することが決まりました。また、日本語の雑誌にも欠号がありますが、是非、自宅の本箱に眠っていいるもの(場所をとって困っている??)を寄贈願います。文庫を充実したものにしていきたいと思っています。

★  『在日朝鮮人史研究』28号が近々発行されます。在日朝鮮人運動史研究会関西部会のメンバーは、年会費4000円を払って3冊を入手することになっています。98年度会費の未納の方はよろしく。また、『研究』のみを購入希望の方は、送料とも2000円(定価は2400円なのです。特価です。を表紙にある郵便振替口座にでご送金ください。

★  青丘文庫のホームページの更新をサボっていましたが、ぼちぼちやりますので、またのぞいてみてください。

★  12月の研究会は、13日(日)です。忘年会もやりますので、ご準備を!!

(編集長/飛田 E-mail rokko@po.hyogo-iic.ne.jp)

 

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