青丘文庫月報191号/2004年11月1日 PDFファイル版

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●青丘文庫研究会のご案内●

■第265回在日朝鮮人運動史研究会関西部会

11月14日(日)午後3時〜5時

200410月強制連行北海道全国交流集会報告」

                  塚崎昌之

■第227回朝鮮近現代史研究会

11月14日(日)午後1時〜3時

「日本における中国朝鮮族の生活と意識」金明姫

※会場 神戸市立中央図書館内 青丘文庫

 

●巻頭エッセー

勤務先から全海建さんのこと  堀内 稔

 古い『むくげ通信』で調べてみると、私が全海建さんに初めて会ったのは、1971418日に、兵庫・私学会館で419を記念した「南朝鮮を考える」という集会の場だったようだ。集会には、見知らぬ年寄りの方と若者グループが参加されており、飛田さんから年寄りの方は全海建という有名な方で、グループは「棄民の会」ということを聞いた。「朝鮮」に関わりだしてまだ間もないその当時、その情報にあまり気を留めることはなかった。

 何年か後、兵庫県下の在日朝鮮人の運動について調べ始めると、全海建さんの名前があちこちの資料に出てくるのに気が付いた。もう一度お会いして、詳しい話を聞かなければならないと思ったが、機会があればという感じでのんきにかまえていた。いま考えると、ほんとに惜しいことをしたと思う。たまたま、神戸学生青年センターの朝鮮語講座に全海建さんのお孫さんがこられていて、おじいさんのことを聞くと1982年に亡くなられたとのことだった。

 全海健さんは19294月に設立された兵庫県朝鮮労働組合の政治教育部長で、その尼崎支部の中心的な活動家であった。また、192910月に設立されたウリ協親会の中心的メンバーでもあった。1937年にはウリ協親会ほか13団体によって兵庫県朝鮮人団体連合会が設立されたが、その人事部長に選出されている。もしお会いできれば、神戸朝鮮労働組合から兵庫県朝鮮労働組合への移行期や、共産党系の日本労働組合全国協議会とウリ協親会との関係など、いまだに分からない点が多い問題について聞きたかった。

 数年前に、全海建さんの息子さんの全成林さんにお会いする機会があった。全成林さんが母親と妹とともに日本に来たのは1937年のこと。警官が突然、何日までに日本に行けと強制的に言ってきたそうだ。家族と一緒にいれば、全海建さんも活動しにくいだろうというのが官憲側のもくろみだったようだという。全海建さんは19426月の神戸市会議院選挙に葺合区から立候補し690票で落選したが、その時の職業は新聞記事では玩具製造業となっている。聞けば、その当時内職でクリスマスのデコレーションを作る仕事をしていたそうだ。選挙の参謀は李民善と張致洙。いずれも戦前の神戸の労働運動では有名な人物であった。

 戦時中、全成林さんは神戸製鋼の日雇いとして働いたことがあった。家庭などから供出された金属製品を切断し、溶鉱炉に投げ入れる仕事で15円の日当だったという。ここで全海建の息子だというと、まわりの労働者は「仕事はしなくていい」と言ってくれたり、弁当を2つ持ってきてくれたりするなど、いろいろ親切にしてくれたそうだ。残念なのは、わずかばかりあった全海建さんに関する資料も、神戸空襲ですべて焼けてしまい、戦前の資料が何も残っていないことだ。

 

<第263回在日朝鮮人史研究会関西部会(2004年7月11日)>

「戦前期京都市における朝鮮人の流入

    ―就業状況を中心に―」                高野昭雄

 戦前期京都市における朝鮮人の流入を論じた一連の先行研究は、当時の京都市当局による行政調査の対象となった「不良住宅地区」に焦点をあてて、綿密な検討を加えてきた。京都市の場合、この「不良住宅地区」全てが被差別部落であった。

 先行諸研究は、二つの詳細な行政調査による分析が可能なこともあって、不良住宅地区を研究対象としてきたが、特に朝鮮人の就業状況については、史料上の制約が大きいこともあって、不良住宅地区以外については殆ど検討してこなかった。そのため、例えば不良住宅地区とその周辺部の職業構成の違いなどは指摘されてこなかった。

 そこで、本報告では、従来研究されることが殆どなかった不良住宅地区以外の地域にも焦点をあてて、まず第一章で、朝鮮人の流入について、京都市全体の中で不良住宅地区の占める割合を、数量的に明らかにし、さらに不良住宅地区周辺部や新市域にも、多くの朝鮮人が流入したことを、やはり数量的に示した。

 つづく第二章では、@不良住宅地区、A不良住宅地区周辺部、B新市域それぞれに流入した朝鮮人の就業状況を分析した。その結果、旧市域の不良住宅地区に流入した朝鮮人は、土工をはじめとする自由労働者の比率が高かったのに対し、旧市域の不良住宅地区周辺部に流入した朝鮮人は、各種職工の比率が高かったことがわかった。一般的には、不良住宅地区やその周辺部に朝鮮人が流入したと語られることが多かったが、不良住宅地区とその周辺部では、流入朝鮮人の職業構成に大きな違いがあることが明らかとなった。このように不良住宅地区とその周辺部が隔絶している京都市の状況は、工業の発展した大阪市とは異なる側面を持つものであった。さらに、一九三一年に京都市に編入された新市域では、社会基盤の整備事業が活発に展開されていたこともあり、流入朝鮮人の職業は、自由労働者の比率が高かったことがわかった。

今後の課題としては、比較の対象としての大阪市や神戸市を分析することや、1930年代の失業対策事業による就業形態(土木業)の変化を考察することなどが挙げられる。

 なお、本報告と同名の論文を『在日朝鮮人史研究』第34号(200410月)に発表させていただきました。当日、貴重なご意見をいただいた方々に感謝いたします。

 

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■新発売■『在日朝鮮人史研究34号』(200410月)

(在日朝鮮人運動史研究会編、緑蔭書房、A5190頁、2520円)

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 この雑誌を特価2000円(送料160円)で販売します。購入希望者は、2160円を郵便振替<00970−0−68837 青丘文庫月報>までお送りください。(在日朝鮮人史運動史研究会のメンバーは会費5000円です。雑誌を3冊お渡しします。)

 

●目次●

・戦前期京都市における朝鮮人の流入−就業状況を中心に 高野昭雄

・朝鮮人徴兵制度の実態−武器を与えられなかった「兵士」たち 塚崎昌之

・日韓条約の締結と在日韓国人の対応

   −第六・七次会談期を中心に 金鉉洙

・在日朝鮮人文学史1945年〜1970

   一韓国系団体・グループの文化・文学活動 宋恵媛

・指紋押捺制度の沿革と在日朝鮮人 金隆明

・「解放後の在日朝鮮人」についての 

   韓国内の研究成果と一般書の叙述 李淵植/宋恵媛訳

・<資料紹介>「朝鮮人調査表」(神奈川県,1933615日) 福井譲

・会の記録(2003.92004.7

 

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神戸学生青年センター朝鮮史セミナー・2004年秋

「新史料で考える日本の朝鮮支配」

@     11月10日(水)午後6時30分〜8時     

 「韓国併合」は朝鮮人が望んだのか?兵庫朝鮮関係研究会会員・金慶海氏

A     11月17日(水)午後6時30分〜8時       

 「強制連行」はあったのか?なかったのか?高校教員、15年戦争研究会会員・塚崎昌之氏

B     11月24日(水)午後6時30分〜8時     

 「創氏改名」は強制ではなかったのか? 京都大学教授・水野直樹氏

●会場:神戸学生青年センターホール TEL 078-851-2760

●参加費:600円(学生300円)

●申込み:不要です。直接会場にお越しください。

 

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シンポジュウム

「近代神戸港の歴史」を考える−中学校「副読本」を中心として−

■日時:2004年11月16日(火)午後6時30分

■会場:神戸学生青年センターホール TEL 078-851-2760

<パネラー>■宮内陽子さん 中学校教師、歴史担当。「副読本」を執筆。兵庫在日外国人教育研究協議会運営委員も勤める。■安井三吉さん 神戸大学名誉教授、中国近現代史。論文集の中国人関連部分を執筆。■金慶海さん 兵庫朝鮮関係研究会会員、論文集の朝鮮人関連部分を担当。

■平田典子さん 西オーストラリア州政府代表部神戸事務所長、本会論文集の連合国軍捕虜関連部分を担当。

<コーディネータ>■田辺眞人さん 園田学園女子大学短期大学部教授、歴史学・比較文化論。

■参加費:500円(申込み不要です。当日会場でお支払いください。)

■主催:神戸港における戦時下朝鮮人・中国人強制連行を調査する会

 

【今後の研究会の予定】

12月12日19日(変則的に第3日曜日です。ご注意ください。)在日未定、近現代史・林茂澤、05年1月9日、在日未定、近現代史・金永基、2月13日、3月13日、4月10日、

※研究会は基本的に毎月第2日曜日午後1〜5時に開きます。報告希望者は、飛田または水野までご連絡ください。

 

【月報の巻頭エッセーの予定】 

12月号以降は、堀添伸一郎、本間千景、松田利彦、水野直樹、文貞愛、森川展昭、山田寛人、横山篤夫、李景a。よろしくお願いします。締め切りは前月の10日です。

<編集後記>

           月報の編集後記にこのところ台風のことばかり書いているようです。また大きな地震もやってきました。みなさまのところでは被害はなかったでしょうか。

           109日〜11日に北海道で強制連行交流集会が開かれました。私は残念ながら参加できませんでしたが、とても充実した集会だったようです。11月の研究会で塚崎さんに報告していただきます。

           在日朝鮮人運動史研究会では、関西部会と関東部会の合同で「第3回在日朝鮮人運動史研究会大会」を開きましたが、そのとき韓国から参加されていた崔ヨンホさんより2005年に釜山で第4回大会を開こうという提案がありました。是非、実現しようと思います。具体的な相談を始めたいと思います。

           神戸学生青年センターでは、前頁に案内にありますように「新史料で考える日本の朝鮮支配」をテーマに朝鮮史セミナーを開催いたします。ご参加をよろしくお願いします。

           上の写真は昨年12月の研究会の写真です。老若男女がそろっています。このときも研究会終了後、神戸駅前の飲み屋に移動しました。  飛田雄一 hida@ksyc.jp

 

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