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青丘文庫月報・171号・2002月6月1日

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●青丘文庫研究会のご案内●

第209回 朝鮮近現代史研究会
6月9日(日)午後1〜3時
テーマ:「日韓請求権交渉史研究−第6次日韓交渉について−」
報告者:太田修

第239回 在日朝鮮人運動史研究会関西部会
6月9(日)午後3〜5時

  ※最近の研究会では一世からのお話を伺っています。
テーマ:「私の在日」
報告者:梁相鎮
会場:青丘文庫(神戸市立中央図書館内)

<巻頭エッセー>
丹波マンガン記念館訪問記    本間 千景
 
3月8〜9日、京大教育駒込ゼミの合宿に飛び入り参加した。9日、京都セミナーハウスでのゼミの日程がすべて終了した後、駒込先生と数名の学生が近くの丹波マンガン記念館を訪ねた。実はホームページをのぞいた時には、その「バタ臭い」マネキンの写真に「怪しい」印象を持っていたのであるが、それは館長の李龍植さんの案内で中を見学したとたん、一気にふっとんでしまった。
 ご存知の方も多いかもしれないが、一応その沿革を記しておく。丹波地方はマンガン鉱山が点在し、ここには多くの朝鮮人・中国人が強制連行され、被差別部落の人々とともに過酷な労働を強いられた。丹波マンガン記念館はご自身もここで働いておられた在日一世李貞鎬氏が作った個人博物館である。坑道を300メートルほど歩きながら、マンガン鉱山の歴史、強制連行の歴史、マンガンそのものについて学ぶことができる。現館長の李龍植氏は前館長の息子さんである。李龍植氏もこの鉱山で働いていた「やま(鉱山)の男」であった。だから、「支柱になってる木の軋む音で、あと二時間ぐらいしかもたへんなあって分かるんですわ。ガハハ!!いやあ、恐いですよ。今でも時々夢見ますわ。」など坑道の中での説明にはリアリティがある。「親父の墓守のつもりでやってます。」という言葉が印象的であった。忘れてはいけないことは、ここでの展示は強制労働の悲惨な歴史をきちんと伝えると同時に、過酷さの中にもここで働いた人たちが「やま(鉱山)」で働くことへの誇りを持っていたということである。李龍植さんのお話の端々に、そして展示の一つ一つに、やま(鉱山)とマンガンへの深い思いを感じることができる。
 坑道の中には20数体のマネキンが配置されており、鉱山での作業がわかりやすく展示されていた。この「バタ臭い」マネキンは一体15万円。東洋人の顔だとその10倍はするという。(おそらく、展示用に注文すれば、ということであろう。)本来洋服を着せられてデパートで並ぶマネキンに、鑿や金槌を持たせ、木馬を押すなどの姿勢をとらせるわけであるから、それように改造しなければならない。それは、前館長夫人が担当されたという。また、本来の坑道は人が這うような高さであることから、これを人が歩けるように整備した。これは息子さんたちの仕事であった。まさに家族手作りの博物館なのである。展示室には、強制連行された朝鮮人への聞き取りの記録が展示されている。そして、マンガンの標本も多く展示され、マンガンが我々の生活にどのように生かされているかということもわかる。まさに、総合学習の場として最適である。
 バブル期にあちこちで博物館・美術館が建てられた。「箱」は立派だが、中身は…というのも少なくない。丹波マンガン記念館は町の補助金がおりない。町のイメージが暗くなるから、という理由からだ。昨年、閉館の危機に瀕したが、多くの人々の募金に支えられて、再開した。我々はその第一日目に訪問したわけである。(実は、掃除にきておられたところを無理やり見せていただいたのであり、実際は3月15日が開館日であった。)
  3月17日、同記念館はNPO法人(特定非営利活動法人)を設立し、市民の共同経営の博物館として再出発した。今後も貴重なテーマ博物館として、その役割を存分に果たしてほしい。何度も訪れたい博物館である。

【寄稿】
梁相鎮「黄砂に霞んだ故郷、漢拏山」
(印刷物の月報にはありますが、インターネット版月報には後日掲載します。)

【今後の研究会の予定】

7月14日(日)です。8月は休み。あと、9月8日(日)、10月13日(日)、11月10日(日)、12月8日(日)。※発表ご希望の方は、水野または飛田までご連絡ください。

【月報の巻頭エッセーの予定】/2002年7月号(藤永)、以降は、、佐野、梁永厚、文貞愛、藤井幸之助、金河元、高木、森川。※締め切りは前月の15日です。よろしくお願いします。

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メールニュースを毎月一回発行しています。内容は、研究会の案内と月報の巻頭エッセー、それに、月報最新号のホームページアドレスです。無料です。希望者は、飛田まで「青丘文庫メールニュースがほしい」とメールをください。rokko@po.hyogo-iic.ne.jp
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<編集後記>
 そろそろ梅雨入りという季節ですが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。先日、阪急六甲の近くの川で(場所は秘密)蛍を発見して感動しました。「乱舞」とはいきませんでしたが。
 今号では、研究会のメンバーで今回60年ぶりに済州島を訪ねた梁相鎮さんの寄稿を掲載しました。梁さんには6月の研究会で、「私の在日」のテーマで話をしていただきます。兵庫県朝鮮人強制連行真相調査団(朝鮮人側)の事務局長でもあります。今年10月には神戸で真相調査団の全国集会も開かれます。
 また映画ネタですが、「KT(金大中)」をみました。知り合いが役者、エキストラででていてびっくりしました。なかなかいい映画だと思いました。
 花岡の李又鳳さんの『在日一世が語る−日帝36年 朝鮮民族に涙の乾く日はなかった』(2002年4月、自費出版、1300円)がでました。学生センターでも扱っています。(飛田雄一 rokko@po.hyogo-iic.ne.jp)

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