『むくげ通信』195号、2002年11月24日発行

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安東国際仮面劇フェスティバル訪問の記 
飛田 雄一
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メイン公演場での仮面劇

今年9月27日〜10月1日、念願の韓国慶尚北道安東市での仮面劇(タルチュム)フェスティバルにでかけた。神戸学生青年センターの韓国「祭」ツアー第4弾にあたるもので、@江陵端午祭(1996年)、A公州百済文化祭(97年)、B珍島霊登祭(98年)に続くものだ。10日間にわたって仮面劇を中心とした祭が続くもので、まさに「仮面劇三昧」の旅である。

 これまで同様の企画が他の団体でもあったが、フェスティバルの日程・プログラムがギリギリになるまで決まらないなどの理由で実現しなかった企画である。今回、センターの企画の勝因は、見切発射である。つまり、10日間の内のどの部分に参加すれば効果的に仮面劇を観ることができるかと、まじめに考えていては日程がなかなか決められない。まずは早い段階でフェスティバルの最初の部分に参加することにしたのである。

 日程は4泊5日。釜山から入りソウルにぬけるコースである。ただし釜山にもソウルにも泊らない。4泊とも安東泊りと徹底したものである。このフェスティバルの期間には全国から見物客がくるのでホテルの確保が大変だった。学生センター御用達の大阪の旅行会社マイチケットが、安東にひとつしかないホテルらしいホテル「安東パークホテル」を確保してくれた。割高であるがハイシーズンということで仕方がない。

 関空から釜山行きの飛行機に乗り込んだのは30代から80代までの8名。車椅子組が2名で、私は初めて、その付添ということでスチュワーデスと同じ入口から特別入場させてもらった。釜山からは貸切バスで一路安東へ。わいわいと最初からにぎやかである。

安東に着いた頃にはもう暗くなりかけている。事前に安東フェスティバルホームページwww.maskdance.comから入手した情報によれば27日初日に花火大会があるという。ホテルについてそのあたりを調べると花火大会は、あす別の所(河回マウル)で開かれることに変更されたとのこと。仕方がない。思い思いにその夜を過した。私は、予習にメイン会場に行ってみた。そこはとにかく広い。甲子園球場2つ分という感じだ。洛東江の河原に運動場、体育館、仮面劇専用マダンなどがある。

すでに飴売り実演、たくさんの屋台、小中学生の絵画展・仮面作品展、製作教室等々と並んでいる。さっそく屋台でマッコリを飲んでホテルに帰って来た。パークホテル−メイン会場間は安東駅をはさんで徒歩20分ぐらいである。

 翌日さあ仮面劇だ。午前中は、三々五々広いメイン会場を散策した。早くもおみやげを買いはじめるメンバーがいたり、ブローチ仮面を作ったり、私は、1時間の仮面劇レッスンの見学をした。両班、おばあさん、若い娘さん、召使いなどそれぞれの歩き方の講習だ。


最大バーの記念写真、メイン会場で

 朝鮮の仮面劇は日本でも鳳山仮面劇などの公演があって知られるようになっている。学生センターと縁の深い沈雨晟先生の関係で私は東京の増上寺までお手伝い兼見物に行ったことがある。両班、僧侶等を痛烈に風刺するものだ。今回10日間にわたって上演されたのは、@水栄野遊A康令羽仮面劇B北青獅ノリC官奴仮面劇D鳳山仮面劇E固城五広大F東莱野遊G楊州別山台H金海五広大I晋州五広大J河回仮面劇K殷粟仮面劇L松坡山台である。まさに仮面劇オンパレードだ。これがそれぞれ2,3回、安東市内の専用のステージや市内からバスで40分の河回マウルで行なわれた。私はあわせて5つも観ることができた。国際仮面劇フェスティバルなので、韓国以外にも日本、グアム、カナダ、ウズベキスタン、スリランカ、インドネシアなどからの出演もあった。もちろんサムルノリもある。

 今回のツアーは、現地参加が4名。ソウルに交換留学中の在日韓国人女性2名、済州島から合流の林弘城さん、ソウルから合流の足立龍枝さんだ。全員で12名だが、途中参加あり、訪ねてきた友人のメンバー引き抜き?ありなど出入りの激しいツアーで、最後まで全員の集合写真をとる機会がなかったほどだ。終始同じホテルに泊り、どこに行こうが勝手というきままなツアーである。

 2日目の夜、河回マウルでの花火大会が韓国の伝統的なものだというので、夕方、安東から河回に出かけた。旅行中の5日間、バスをチャーターしていたので、臨機応変、行きたいところにはすぐに出かけることができた。河回での花火は、全く音のしないものだ。説明が難しいが、対岸の100メートル程の岩までワイヤーが放射状に5本張られており、そのワイヤーにつけられた花火が対岸の方向にドンドンと進むのである。仕掛け花火である。そして対岸の岩の上からは時折大きタイマツが川に落され、川には灯籠が流れる。それらを思い思いに眺めるのである。なかなか風情がある。


河回マウル、夜、岩の上からタイマツが落された

 3日目、9月29日(日)は、またまたメイン会場で仮面劇、それに日本から参加のひとり人形劇「赤頭巾ちゃん」も観た。あとで分かったことだが台詞も人形もまったく一人でやっていた。朝鮮語での上演で韓国の子供たちも喜んでいた。以前は日本で学校公演を中心に上演していたが最近はもっぱら韓国で活動しているとう。たいしたものだ。声援を送りたい。午後からみなでまたバスにのり今度はお昼の河回に出かけた。日曜日で河回は混み合っていた。野外舞台では、グアムのグループが出演していた。河回の民俗村を見学したあと、常設の仮面劇劇場で、河回仮面劇をみた。すごい数の観客で背伸びをして覗きこんだ。ここの仮面劇は毎日曜に上演されているもので、役者と観客のかなり卑猥なやり取りが、私の朝鮮語能力では理解できなかったがとても面白かった。

 河回の途中で立ち寄った風停寺はもよかった。韓国のお寺は多くが山中にあり、私たちの韓国ツアーでもよく訪ねるがいいものである。

 4日目(30日)、この日はバスツアーで陶山書院にでかけた。メイン会場での仮面劇三昧にも飽きて来たころで、いいバス旅行だ。他に博物館や巨大な石仏も訪ねた。安東に午後もどったら、途中合流で河回にまだ行っていない林弘城さんが河回にやはり行きたいという。それで2人でタクシーに乗ってでかけた。私は3回目の河回だ。月曜日で前日とうってかわって静かな河回マウルを堪能することができた。遅くなってタクシーもなくなってさあ困ったと思ったら具合よく仮面劇フェスティバル巡回バス(有料)の最終便があり、安東に約束の時間にもどることができた。そしてツアー最後の晩の宴会である。といっても毎晩のようにメイン会場の屋台で飲んでいたが‥‥。

 5日目、最終日はいよいよ帰国だ。安東で仮面劇を堪能して一路ソウル仁川空港にバスが走った。このフェスティバル、韓国のケンチャナ精神が随所にでていて上演されるはずのコクツガクシノルム(伝統人形劇)がプログラムから消えていたり、プログラムにはなかったがやはりムーダン(みんな男だった)のかなり激しい踊りが延々と続けられているコーナーがあったりで充分に楽しむことができた。また「祭」ツアーは続きそうである。

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