『むくげ通信』190号/2002年1月
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  むくげの会の2001年、そして新春合宿 飛田 雄一
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 恒例のむくげの会の新春合宿は、さる1月3〜4日和歌山県湯浅でひらかれた。メンバーは、合宿初参加の尹達世を含めて8名の全員参加。この合宿の費用は、会の頼母子講的会費から支出されるため、行かなソンソンの世界であり休む者はいない。昨年、山陰宮津に蟹も?目当てにでかけて雪のためにえらい目にあったので、南の雪の降らないところにいこうというだけの意図で湯浅に決まった。

 午後1時半、学生センターを出発。湯浅の前に和歌山市でのフィールドワークがある。本誌で尹達世が紹介している李梅渓の墓のある海善寺と「三年坂」である。その由来は本誌を参照していただきたい。ただ「さんねん峠」については、朝鮮児童文学の専門家・仲村修氏の説によると日本国内どこにでもある民話だとのこと。尹達世の「和歌山だけに伝えられているのは不思議なこと」との関連は、またおふたりで論じていただきたいテーマである。

 和歌山市を後にして夕方には充分な時間的余裕をもって湯浅の有田オレンジユースホステル(民宿ヤマギワ)に到着の予定であったが、大トラブルが発生した。レンタカーについていたカーナビを初めて使った飛田運転手がそれを信じすぎたために飛んでもないことになったのである。当初はカーナビの女性アナウンサーが「次のインターを左折して道なりに5キロです」とかいう声に「はいはい」と調子をあわせてうまくいっていた。が、目的地近くで(と、思っていた所で)そのカーナビの指示を少し間違えていひとつ手前の信号を右折した。するとカーナビは、それにすばやく反応して新たな道を指示した。その指示どおりに進むと古びた造船所にでた。さてこのまま進んでいいものかと運転手は悩んだか、背後でいけいけ、という声もありそのままカーナビの指示どおり進んだ。修理中の船の横を通り、狭い道をそろそろと進んで行くと、カーナビにはある道が突如なくなった。突堤が切れて前は海である。バックするほかない。日没は迫っている。メンバーは運転手を残してさっと車を降りてしまった。危険を察知したのである。なんと機敏かつ薄情なことであるか。バックする間、それぞれに「危ない、海に落ちる」「もっと右」「左に杭がある」と声援は送ってくれる。ようやくもとの道までもどったころに日が暮れてきた。いやはや肝をつぶした。昨年の雪の苦労が楽しく思いだされるくらいであった。

 さて間違った信号まで戻ろうとしたが暗くなってよく分からない。ランニング中の叔父さんに道をたずねると「ええ湯浅までいくのですか」という感じである。カーナビの初期入力そのものが間違っていたのである。道順を説明しても分かってもらえないとあきらめた叔父さんは自宅から車をだしてきて、なんと目的地まで先導してくれたのである。「地獄に叔父さん」であった。お礼に買いこんでいたお酒をさしあげ、全員で最敬礼した。


李梅渓の墓の付近で説明する尹達世

 毎年、合宿では夕飯からお酒を飲みはじめるが、メインの行事は、各会員が過ぐる1年を振り返り来る1年の計を語るスピーチおよびそれに対する辛辣な批判である。このスピーチが本誌に公式記録として残され、未達成な計画があればまた翌年の合宿で辛辣な批判をうけることになるのである。以下はその記録である。


李梅渓の墓の周りで墓石のようにたつ?メンバー

【堀内】在韓華僑研究会でのテーマ「戦時下中国人の労働運動」の研究が一区切りしたのでそれをまとめて発表したい。むくげ叢書での個人の出版計画はない。

【山根】1年前の合宿で『むくげ愛唱歌集』の改定版発行を約束したが今はそれをやりたくない。(←はやり出すべきだ、今でも注文はくるし改定版はでそうにないので全くの復刻版をだそう、とかの意見もでたが結論は酒のせいか覚えていない)今年は北朝鮮の歌の研究をしてその道の第一人者になる。

【佐久間】昨年『世界史辞典』(角川書店)の朝鮮関係の記事を書きすでに出版された。延辺で出版された『歴史写真集』を出す予定だったが出せなかった。柳東浩さんの本をむくげ叢書でだすはずだったが、出せなかった。→議論の末、佐久間が5月末までに柳東浩さんの朝鮮語論文を翻訳し、その他のものを合わせてむくげの会編で今年中にむくげ叢書より出版することになった。

【寺岡】播磨風土記の本をむくげ叢書から5年前に通信の連載をまとめて出しておいたら良かったと後悔している。今はそのままでは出せない。今年は出版できないが、来年には出したい。

【佐々木】『朝鮮の食と文化』続編を昨年1年かかって書き直した。出版社にもちこみ今返事待ちの状況だ。今年は、出版のために努力する。

【尹達世】愚直でまじめかつマイナーな勉強集団むくげの会に昨年入会した。今年は沙也可の研究を大成するか、沈没するかだと思う。

【信長】昨年は『東学農民革命百年』の翻訳に力をいれた。今年はそれを完成させて出版する。その後、東学研究を続ける。キリスト教の新たなテーマも探して勉強したい。

【飛田】昨年出すと言った本は出ていない。今年は出したいとは思っている。金英達の本を3周忌を目処に出版する。

 その他、会計報告(これは極秘)、『むくげ通信』の新たな読者獲得方法(見本紙は送ります。ご紹介ください)、1年間の『むくげ通信』編集長・印刷主任・メイン論文の担当等について相談して会議は終わった頃には何人か眠っていた。

 翌日、宿の愛想のいい女主人にコーヒーを御馳走になりながら、帰路予定の龍神スカイラインの話をしていると、雪で無理ではないかとのこと。ああ、和歌山でもそんなことがあるのかと観光案内所に電話をすると必ずチェーンをもってきてくださいとのこと。雪の嫌いな運転手は即コースを変更を提案、そして全員一致で白浜温泉に行くことにした。崎の湯の露天風呂は抜群であった。写真もあるが事情によってお見せできないのが残念である。

 白浜は小学校の遠足以来40年ぶりというメンバーもいて三段壁等の観光も好評であった。昼食には大きな鮮魚マーケットに立ち寄りサンマ寿司などを思い思いに食べた。帰路は、カーナビの女性の声を最後まで快く聞きながら無事神戸に帰ってきた。ことしも実りの多い合宿でありました。

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2001年・ゲストディの記録
2/27 尹達世さん
4/3  黄慧瓊さん(奈良女子大留学生)
4/17 朴洪圭さん(嶺南大学教授)
5/8  金清興さん
9/18 宋伍強さん(留学生)
11/6 李東秀さん(元在米牧師)
12/18 金世徳さん(神戸大学留学生)

『むくげ通信』総目録むくげの会神戸学生青年センター