『むくげ通信』158号(1996年9月)

●研究ノート●

 CD−ROM版・判例データベースと解放後の在日朝鮮人をめぐる裁判 飛田雄一

 

●はじめに

 私が原告団長をつとめるゴドウィン裁判は、去る7月12日、大阪高裁の判決が出た。残念ながら「控訴棄却」の判決だ。ゴドウィン裁判は、くも膜下出血で入院したスリランカ人就学生・ゴドウィンさんの生活保護を求める裁判だ。根本の問題は、緊急入院が必要とされるような状況に追い込まれた外国人の生存権が実現されるか否かという問題だ。この生存権を実現するのが生活保護法である。

 しかし、一審、二審ともこの根本問題についての判断を避け、形式論だけで門前払いの判決を下したのである。われわれ原告は、神戸市長に代わって国にゴドウィンさんの生活保護費(国庫負担金)を請求した。しかし裁判所は、@地方自治法に242条の2に定められた住民訴訟は、国庫負担金は対象とならない、A原告が追加的に訴えた不当利得返還請求と損害賠償請求は、出訴期間を過ぎている(遅刻)だからダメだ、というのである。

 冒頭からややこしい話で恐縮だが、要するに「外国人の生存権‥‥」以前の問題として、訴えそのものが成り立たないとして門前払いにしたのである。対象外だ、遅刻だと言われても、われわれが請求しているのは、終始一貫、金額で言えば120万円余の国が本来支払うべきお金であり、それが国庫負担金であろうがなんであろうがかまわないのである。

 いずれにしても、この門前払い=「入口論争」をクリアーしなくてはならないので、上告理由書作成のために過去の判例を徹底的に調べることになった。前書きが長くなったが、そのために判例のデータベースに挑戦することになったのである。

 本稿では、そのデータベースの内容、利用方法等について述べ、あわせて利用者の立場からコメントを述べたい。そしてそのデータベースを利用して、戦後(解放後)の在日朝鮮人に関係する裁判に関する動向等について述べたいと思う。

 

●図書館とコンピュータ

 従来、判例を調べようとすれば、判例が収録されている本のたくさんある図書館にこもって、いろいろな「手ずる」を通じて網にかかった判例を探し出すことになる。それなりの方法はあるが、探し洩れもあるだろうし、判例があることが分ってもそれを収録した本が手に入らないということもある。

 近年、コンピュータの発達にともない、膨大な情報がCD−ROMに収録されて発売されている。情報の価値が高いだけにその価格も高い。いくつかの種類が発売されているが、今回、取り上げるデータベースを値段の高い順に並べれば次の通である。

 

@ 第一法規「判例・CD−ROM」

A 日本法律情報センター「リーガルデータベース」

B 新日本法規「判例マスター」

 

 @は、9枚のCD−ROMよりなるもので、判例全文が納められている。他に、「全要旨版」と「法律判例文献情報」がある。料金は左頁の表のとおりである。(きたなくてすみません。飛田)

 

 

  一方、AとBは、CD−ROM一枚に納められている。

 今回、私が最初に利用したのはAの第11版だ。神戸弁護士会で利用させていただいた。コンピュータはNEC9801DX。少々古い機械だ。AにはMS−DOS版とWINDOWS版があるが、そこにあったのはMS−DOS版だった。マニュアルが横においてあるが、利用方法を教えてくれる人はいなかった。最初の二、三時間はマニュアルを読みながら、ああでもないこうでもないと奮闘していたが、突然その全貌が分った。あとは感激の連続だった。

 そこに納められている判例は、9万1356件。次頁の雑誌が納められている。このリストを見ただけで、「こりゃすごい!」とその筋の人は言うことになる。これらの雑誌がすべて納められている図書館はそう多くない。また、それぞれの雑誌に総索引があったとしても、必要な判例を探し出すのは、並大抵のことではない。これまで判例を探しに図書館にいくことがあったが、論文等に引用されていた判例をコピーすることが多く、各雑誌を片っ端から探すというのは実際には不可能だった。ただし戦前の判例はデータベース化されておらず、検索できるのは戦後の判例である。

 

●いざ、検索へ

 検索の方法には、「任意語」「法令条文」「書誌(裁判日付、裁判所、事件番号、当事者、裁判官、弁護士)」「実務」「出典」がある。「実務」はリーガルデータベースがキーワードとは別に定めたもので、判例を分類し、例えば「国際関係−出入国」というような項目立てがされている(実際に検索すると657件あった)。

 今回のゴドウィン裁判での関連する判例探しのポイントは、先に述べたように「出訴期間」と「訴えの変更」だ。われわれの裁判では、地方自治法242条の2の問題だが、この「出訴期間」と「訴えの変更」は、地方自治法にだけ関連しているのではない。そこで「法令条文」ではなく「任意語」で検索することにした。

 「訴えの変更」をキーワードに検索してみると253件、「出訴期間」をキーワードに検索してみると446件がヒットした。次に「出訴期間」かつ「訴えの変更」(両方のキーワードを含む判例)で検索してみると35件がヒットした。それぞれの「詳細画面」に移ると関連部分の判例が表示され、そのキーワードの部分が丁寧にカラーで表示されている。

 Aのリーガルデータベースには、判例の全文が収録されているわけではない。いくら多くのデータが入るCD−ROMでも9万件の判例全文は入らない。基本的に左記の事項が収録されている。

 

文献番号(リーガルデータベース独自のもの)

事件名

事件番号(「平成*年(行ア)第**号」とかいうもの)

裁判日付(判決日)

裁判所(裁判所名の他に確定したかどうか等が書かれている)

判示事項

裁判要旨

法令条文

裁判官(名前が記されている)

出典(『行政事件裁判例集』**巻*号***頁という具合に)

参考文献※(関連論文の雑誌名、号数、頁)

判例評釈※(     〃       )

必要全文※(判例の抜粋でキーワードに関連する部分がそれも     その部分が色付きで表示される)

 (※印は、この項目がない場合もあるもの)

 

 全文を見る必要がある場合は「出典」の雑誌を見ればいい。また判決後に書かれた参考文献、判例評釈が紹介されているのが非常に便利である。

 そのままプリントすることもできるし、フロッピーディスクにダウンロードして別のワープロ等で読むこともできる。別のワープロで読めるということは、その文章をそのまま引用することもできるということだ。(ダウンロードしてからプリントしたものには、「必要条文」のカラー文字まではでていないが、これはしかたがない?!)

 「生活保護」をキーワードに検索してみると85件がヒットした。のちにプリントして友人に分析してもらうと、生活保護裁判の中でも重要な判例が欠落している半面、生活保護法に関係のない判例で一般用語として「生活を保護する」という意味で「生活保護」が使われている判例をコンピュータが機械的にヒットしてしまったという例もあった。もちろん、これまで知られていなかった判例も発見できたという。

 

●「韓国人」かつ「朝鮮人」

 戦後の朝鮮人関係の判例を調べてみたいと考えて、「韓国人」「朝鮮人」をキーワードに検索してみた。「韓国人」が171件、「朝鮮人」が105件ヒットした。「韓国人」または「朝鮮人」、すなわち判例の中にどちらかあるいは両方が含まれている判例を検索すると256件あった。韓国人、朝鮮人の合計が276件あったので、その内20件は両方の言葉が含まれていたことになる。

 256件をすべてプリントして目を通すと戦後の朝鮮人関係の裁判を概観できることになり、非常に興味深い。256件の中には一部同一の判例があるが、それは「公式判例集」(3頁のリストの最高裁判所民事判例集〜東京高等裁判所判決時報刑事まで)に重複して掲載されているものは「同一の判例であっても判示事項、要旨のつけ方に違いがみられることがある」ので重複掲載している。(公式判例集と判例雑誌の間で重複している場合は公式判例集を収録している)

 具体的には次のような形で掲載されている。

 

【文献番号】090834

【事 件 名】再入国不許可処分取消等請求控訴事件

【事件番号】平成1年(行コ)第7号

【裁判日付】平成6年5月13日

【裁 判 所】福岡高等裁判所判決/一部認容,一部棄却◇未確定

【裁判経過】(1)福岡地方裁判所判決 昭和61年(行ウ)第15号 平成1年9月29日

【判示事項】1、市民的及び政治的権利に関する国際規約一二条四項の「自国」の意味

2、再入国許可を受けることなく本邦を出国したことにより協定永住資格を喪失している者につき、法務大臣が適法に再入国許可をしていれば出国によっても協定永住資格を喪失していなかったこと等を理由として、再入国不許可処分の取消しを求める訴えの利益が肯定された事例

3、法務大臣の協定永住資格者に対する再入国拒否処分における裁量の範囲

4、協定永住資格を有する在日韓国人に対し、指紋押なつ拒否を理由として再入国許可申請を不許可とした法務大臣の処分が、協定永住資格を喪失させる退去強制処分と実質異ならない余りにも過酷な処分として比例原則に反し、その裁量の範囲を超え又は濫用があったものとして違法とされた

事例

【裁判要旨】1、市民的及び政治的権利に関する国際規約一二条四項にいう「自国」とは「国籍国」を指すと解すべきである。

2、〈略〉

3、協定永住資格者の法的地位が、歴史的経緯も踏まえて日本国民とほとんど異ならない地位にまで高められており、他方、日本国民は憲法二二条二項により海外旅行の自由が認められているところからすると、法務大臣は協定永住資格者に対して再入国拒否処分をする際には、協定永住資格者に対しては退去強制事由が極めて限定されていることと、協定永住資格を喪失すると再度協定永住資格を取得する余地のないことを特に考慮すべきであり、その裁量の範囲は、他の在留資格者における場合に比し、自ずから一定の制約がある。

【法令条文】外国人登録法(昭和62年改正前のもの)14

行政事件訴訟法30

行政事件訴訟法9

行政訴訟通則

市民的及び政治的権利に関する国際規約12−4

出入国管理及び難民認定法(平成元年改正前のもの)26

日本国憲法22−2

民法1−2

【裁 判 官】緒賀恒雄,近藤敬夫,木下順太郎

【 出 典 】訟務月報41巻5号1141頁

【参考文献】行裁例45巻5〜6号1202頁、判タ855号150頁

【判例評釈】喜多剛久・訟月41巻5号1143頁、須藤陽子・ジュリ1057号90頁、本多滝夫・ジュリ臨増1068号30頁

 

 ずっと古い判例では、次のようなものもあった。

 

【文献番号】009019

【事 件 名】公務執行妨害昭和二三年政令第二三八号違反被告事件

【事件番号】昭和26年(う)第874号

【裁判日付】昭和26年12月26日

【裁 判 所】仙台高等裁判所判決/破棄自判

【裁判経過】(1)盛岡地方裁判所

【判示事項】1 昭和二三年政令第二三八号第一七条における「検査」の告知の一事例

2 同政令第一七条第三項の解釈

3 同政令に基く県吏員の検査行為の法律上の根拠

【裁判要旨】1 昭和二三年政令第二三八号違反事件について、県吏員が、解散団体の指定を受けた朝鮮人連盟岩手県本部事務所に致り同事務所の責任者たる被告人に対し「連盟が解散になりましたから財産の接収に参りました」と告げたことは、同政令第一七条の「検査」の告知をなしたものと解すべきである。

2 同政令第二三八号第一七条の検査に赴いた県吏員が、同条第三項所定の身分票を携帯し且つ検査に来た旨を告げた以上、その検査行為は有効である。

3 同政令第二三八号違反事件に関する県吏員の検査行為は、同政令第六条に基く保全措置で、この行為は、同政令第一六条により、法務総裁は道府県知事に代行させることが出来、代行を依嘱された知事は同政令第一七条第二項により当該吏員をして帳簿其の他の物件を検査させることが出来るのである。

【法令条文】解散団体の財産の管理及び処分等に関する政令(昭和23年政令第238号)17−3

解散団体の財産の管理及び処分等に関する政令(昭和23年政令第238号)6

解散団体の財産の管理及び処分等に関する政令(昭和23年政令第238号)16

解散団体の財産の管理及び処分等に関する政令(昭和23年政令第238号)17−2

【裁 判 官】松村美佐男,檀崎喜作,蓮見重治

【 出 典 】高等裁判所刑事判例集4巻12号1680頁 

【文献番号】015795

【事 件 名】窃盗、外国人登録令違反

【事件番号】昭和29年(う)第515号

【裁判日付】昭和29年10月21日

【裁 判 所】仙台高等裁判所判決/棄却

【裁判経過】(1)仙台地方裁判所判決

【判示事項】朝鮮人に外国人登録令を適用することは憲法第九八条第二項に違反するか

【法令条文】憲法98−2

外国人登録令11

外国人登録令3

外国人登録令12

【裁 判 官】細野幸雄,鈴木禎次郎,蓮見重治

【 出 典 】高等裁判所刑事裁判特報1巻8号381頁

 

 後日、神戸大学で法学部の樫村志郎先生にお願いして同大学のWINDOWS版のリーガルデータベースを利用させていただいた。樫村先生はこのデータベースと東洋情報システムの「ジュピター」を検索し、他に『判例大系』等も利用して「労働事件における裁判官の経歴と判決−司法行政研究資料(一)」(『神戸法学雑誌』第41巻第1号、91年6月)を書かれている。裁判官の略歴を『全裁判官経歴総覧』等によって経歴を調査してそれが判決に及ぼす影響について研究されている。このような研究もコンピュータによるデータベースがあってこそ可能になったものである。(「ジュピター」は競争に破れてその後廃刊、廃版?された)

 WINDOWS版はMS−DOS版に比べると使いやすいので、さらにいろいろと検索してみた。

 裁判官名=「杉本良吉」で検索した。杉本良吉さんは教科書裁判あるいは台湾人の強制送還関係の裁判でいい判決を書いた裁判官として知られている。その判決も含めて154件もヒットしてびっくりした。

 @の第一法規「判例・CD−ROM」は、たまたま、大阪高裁にゴドウィン裁判の上告理由書の提出に行ったとき、大阪弁護士会でデモンストレーションをしていたので、少しだけ触ってみた(10月31日までしている)。値段も高いが一番本格的なデータベースである。第一法規が加除式で出版してきた『判例体系』等をデータベース化したもので、判例本文は9万5千件、判例要旨は28万件分収録されている。CD−ROMが9枚分あり、要旨検索あるいは本文検索のCD−ROMで検索して実際に判決本文を引き出すときにはCD−ROMを入れ替えることになるはずだ。(2頁の表参照)実際の検索作業は、先のリーガルデータベースのように操作しやすものになっている。CD−ROMの出し入れが面倒くさいと思われるが、すべてハードディスクにコピーして使う方法もあるそうだ。(このあたりはコンピュータおたくにしか分らない話だが、CD−ROM一枚が130MBとして10枚分で1300MB、最近ハードディスクが安くなったので可能性もある。最近、裁判所もCD−ROMのデータベースを購入したという話だが、この一番高い第一法規のものを購入したのだろうか?)

 このデータベースがデモンストレーションではなくて実際に使えるところをわたしは知らないが、神戸大学でも購入の予定があるとうかがっている。(どうゆうわけか?、10月1日午前10時から神戸学生青年センターでこの「判例・CD−ROM」のデモンストレーションがあるので興味ある方は飛田まで連絡を! しかし、この通信が読者の手元にとどくのが10月1日ですネ。)

 

●「判例マスター」のできばえ

 新日本法規の「判例マスター」(B)は、一番ポピュラーなものだ。値段も安いし弁護士事務所で導入しているところも多いと聞いている。これもWINDOWS版とMS−DOS版があるが、私は友人の弁護士事務所でWINDOWS版を利用させていただいた。

 収録している判例は、9万2218件で、Aのリーガルデータベースより少し多い。一例として有名は「在日朝鮮人祝賀団北朝鮮向け再入国事件」をあげると次のようになっている。

 

〔文献番号〕 七〇一〇一六〇〇〇五[*]

〔裁判所名〕 最高裁第二小法廷 判決

〔判決日付〕 昭和四五年一〇月一六日

〔事件番号〕 昭四四(行ツ)一〇号

〔事件名 〕 在日朝鮮人祝賀団北朝鮮向け再入国事件の上告審判決

〔参照条文〕 行政事件訴訟法九条、出入国管理法二六条、出入国管理規則二四条、出入国管理規則様式

〔出  典〕 民集二四巻一一号一五一二頁、訟月一六巻一二号一四八二頁、判時六〇七号一四頁、判タ二五四号一三〇頁

〔評  釈〕 富沢達・判解三七事件・曹時二三巻二号一七四頁、萩野芳夫・民商六五巻四号五九六頁・法時四三巻一号六三頁、和田英夫・ジュリ増刊(憲法の判例第三版)九六頁、山下威士・別冊ジュリ四四号一一八頁・六八号一四〇頁・九五号一八八頁

〔裁判経過〕 第一審昭和四三年一〇月一一日東京地裁判決昭四三(行ウ)一五四号、第二審昭和四三年一二月一八日東京高裁判決昭四三(行コ)五五号

〔判示事項〕◆再入国許可申請に対する不許可処分の取消を求める訴の利益が失われたものとされた事例

      ◆朝鮮民主主義人民共和国創建二〇周年祝賀行事に参加することを目的とする再入国許可申請に対してされた不許可処分の取消を求める訴は、参加を予定した右行事のすべてが終了した後約一か月を経過した時点においては、すでに判決を求める法律上の利益を喪失したものというべきである。

 

 リーガルデータベースと同じような内容になっているが、「出典」のところは複数の出典が書かれている。これは、リーガルデータベース(A)が公式判例集にあるものはわざと重複して掲載しているが、「判例マスター」(B)ではそれらを整理して一つだけ掲載している。判例数の総数の差はAとBでは862件だが、この重複のことを考えると差はもっと大きいといえる。

 操作性は非常に良い。というより、だんだんと私自身が使い方に慣れてきたことと、どのデータベースもお互いに競争しているので同じような仕様になっていることが関係しているようだ。

 

●在日朝鮮人史研究の一助に

 次にA、Bふたつのデータベースで、具体的に朝鮮人に関係するキーワードで検索してみてその件数の違いについて調べてみたのが次の表である。(「×」は「かつ=&」の意味。ほとんどをプリントにしてあるので必要な方には便宜を計ります)

 

検索項目

Aリーガル

B判例マスタ

韓国人×朝鮮人

256

336

外国人×選挙権

入管法

329

174

外登法

131

514

国際人権規約×外国人

34

難民

75

56

退去強制

240

189

   

 この件数の多少については、必ずしも良い悪いとはいえない。基本的なデータの数の問題、先に書いたリーガルデータベースの重複の問題、また検索方法(キーワードの設定)の問題があると思われる。

 プリントした右表の判例を見てみると、

・戦後の早い時期に朝鮮人と結婚した日本人の国籍書き換えに関する判例が多い

・団体等規正令による朝連解散関係の判例が散見される

・退去強制裁判は基本的に韓国・朝鮮人が多いが、80、90年代にはその他の外国人の判例が増加している

  −、という傾向がある。

 

 今回紹介したデータベースいずれも高価なものだが、それだけの値打ちはある。慣れない人にはどちらにしても最初は問題があるだろうが、コンピュータ技術的には、いずれも使い勝手はいい。CD−ROM一枚のABを比べると、私はBの法がいいと思う。それは、重複掲載がないので利用しやすく統計的な分析もできる、孫振斗裁判の最高裁判決のようにAの「任意語」で検索してヒットしないがBではヒットする判例がいくつかある、Aでは検索結果の判例一覧表がプリントできない等の理由による(Bで「難民」をキーワードに検索した一覧表を右頁に掲載した=省略しました、飛田)。

 逆にAにも、裁判官の名前が記されている、判例のエッセンスの部分が原文で収録されているというメリットもある。

 在日外国人の人権を守るための方法の一つとして、今後も裁判は重要な部分である。過去の「成果」を充分に踏まえて、裁判を進めていく必要があるが、そのためにの大いにこれらのデータベースを使わなくてはいけない。また、朝連解散問題等、在日朝鮮人史についてはまだまだ解明しなくてはいけない課題があるが、判例もそのための材料のひとつである。植民地時代の朝鮮民族運動史研究に判例が有効なものだが、戦前の判例のデータベースもすすめてもらいたいと思う。

 本稿が、コンピュータが「こわい」人にも、役に立つマニュアルにもなっていることも願っている。

(『むくげ通信』158号、1996年9月、1996年版の合本、1100円、送料240円がでている。希望者は、rokko@po.hyogo-iic.ne.jp 飛田まで。)

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